慢性閉塞性肺疾患(COPD)

気管支疾患の「慢性気管支炎」と肺胞疾患の「肺気腫」は、重複して起きていることが多く、両者を合わせて「慢性閉塞性肺疾患」と呼びます。最近では「COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)」という呼び名で取り上げられることが増えているので、耳にした方も多いのではないでしょうか。

慢性気管支炎では、気管支や細気管支壁で慢性炎症が起きていたり、気道内腔へ分泌液がたまったりするため、咳や痰の出る状態が長く続きます。肺気腫では、肺にある肺胞の組織が拡張して破壊され、肺機能が低下します。そのため坂道や階段の上り下りで息切れを起こしたり、ちょっとした運動でも息苦しさを感じたりするようになります。

治療法は、慢性気管支炎も肺気腫も、大きな違いはありません。状態が安定していれば、吸入薬による薬物治療を行います。近年はCOPD治療薬の種類が増えており、個々の患者さんの症状に合わせて、タイプの異なる気管支拡張薬や炎症を抑える吸入ステロイド薬を組み合わせて治療します。喫煙者の場合、禁煙は必須です。

重症で血管内の酸素が不足している場合には、酸素吸入を行う必要があります。自宅で酸素吸入する「在宅酸素療法」には、健康保険が適用されます。また、最近は持ち運びできる携帯用の酸素ボンベが広く使われるようになっているため、外出することも可能です。

慢性閉塞性肺疾患は、喫煙によるリスクが大きい疾患の代表例で、80〜90%は喫煙が原因で起こります。そのため「タバコ病」と呼ばれることもあります。また、長期間にわたって喫煙していた人の1〜2割が慢性閉塞性肺疾患を発症しており、世界的にも喫煙率が高い国で患者数が多くなっています。

日本でも年々増加傾向にある病気です。大多数が未診断、未治療の状態であると考えられています。世界でも死亡原因の上位にあり、今後も有病率、死亡率ともに世界的規模で上昇するとみられており、対策が必要とされている病気です。


ページの先頭に戻る


■ 関連リンク